外壁の断熱リフォームで、家の中の寒暖対策ができます。夏は外気の熱の侵入を防ぎ、冬は室内の暖気が屋外に漏れないようにするのが断熱リフォームの基本です。
この記事では、気になる外壁の断熱リフォームの効果や工事の種類などをまとめました。また、リフォームでもらえる補助金制度についてもご紹介します。

Contents
断熱リフォームで得られる効果

「断熱」とは、建物内外の熱の移動を遮断する働きのこと。断熱リフォームを行うことで次のような効果があります。
室内の寒暖対策
夏は外の熱を遮断し、冬は建物の熱が外に逃げにくい状況を作り出すことができます。そのため、冷暖房を使いすぎることがなくなり、節電対策になります。つまり光熱費の削減に繋がるのです。
結露・カビの抑制
外と中の空気が直接伝わる壁や窓は、特に冬場には極端な寒暖差が生じ、結露やカビを発生させます。断熱リフォームによって室内外の温度差が軽減されると、これらを抑制することができます。
防音効果
リフォームの工法や断熱材の種類によっては、防音効果を発揮するものもあります。断熱材のひとつ、グラスウールは吸音性があるとされています。
外壁断熱リフォームの施工方法
断熱リフォームの工法は様々で、断熱素材も多数開発されています。今回は外壁の断熱リフォームを3種に分けてご紹介します。

外張り断熱工法

外張り断熱工法はおもに木造・鉄骨住宅に用いられる施工法で、ボード状の断熱材を柱の外側から貼り、建物全体を包み込む断熱方法。断熱材が切れ目なく続くので、安定した高い断熱性・気密性を保ちます。
夏・冬を通して壁体内も室内と近い環境になり、室内との温度差が少なくなります。そのため、壁体内の結露の可能性も少なくなります。
また住みながら施工することが可能なので、引っ越しや仮住まいの必要もありません。メリットは多いですが、断熱材の上から外壁材を留める工法のため、外壁が厚くなり、狭小地や複雑な間取りには向かないというデメリットもあります。
リフォーム価格 | 1㎡/8千~3万円 |
工期 | 2~3週間 |
メリット | 建物全体を覆うため、内部結露しにくい
断熱性が高い配管・コンセントボックスなどが施工の障害にならない |
デメリット | 外壁に厚みが出るため、敷地に余裕が必要 |
外断熱工法
外断熱工法は、おもに鉄筋コンクリートの建物に対して外側を断熱材で覆う工法です。施工方法は、外張り断熱工法と変わりはありません。
木造住宅との違いは、コンクリート自体が蓄熱層となることです。外側を断熱層で覆うことで外気を遮断し、冷めにくいコンクリートの性質を室内に活かします。高気密・高断熱になるので、同時に換気対策も立てる必要があります。
リフォーム価格 | 1㎡/8千~3万円 |
工期 | 2~4週間 |
メリット | 高気密・高断熱になる
配管・コンセントボックスなどが施工の障害にならない |
デメリット | 外壁に厚みが出るため、敷地に余裕が必要
換気が必要 |
内断熱工法(充填断熱工法)

内断熱工法(充填断熱工法)は、壁の内部にある柱や筋交いの間に断熱材を充填する方法で、木造建築で多く取り入れられています。。
グラスウールやロックウールなど繊維系の断熱材は、取り扱いやすく防音性や耐火性も高い点でよく用いられる断熱材です。また、内断熱の中でも、セルロースファイバーという木質系の繊維や粒状になったグラスウールを、機械で隙間なく吹き込んでいく「吹き込み工法」、硬質ウレタンフォームなどの断熱材と合板などが一体になり、断熱性と耐震性をうたった「パネル工法」などは近年注目され始めています。
外断熱と違って、柱の間に断熱材を配置するので外壁が厚くなることはありません。都会などの狭小地でも面積を気にせずリフォームができ、また、部分的な断熱となるためその分だけコストが抑えられることがメリットと言えるでしょう。しかし、外断熱に比べて気密性が低く結露が発生しやすくなります。
リフォーム価格 | 1㎡/4千~2万5千円 |
工期 | 3週間~1ヶ月以上 |
メリット | 狭小住宅によい
外断熱工法に比べて低コスト |
デメリット | 隙間ができやすく、断熱効果はやや劣る
配管・コンセントボックスなどの障害がある部分の施工に注意が必要い |
内断熱と、外断熱の両方を組み合わせたハイブリッド断熱という方法もあります。
断熱塗料による塗装工事
遮熱効果のある塗料(高日射反射率塗料)
メーカー | 製品名 |
塗遮熱料の効果 ・建物を暑さから守る ・節電効果(空調費の省エネ) ・建材の熱損傷を防ぐ |
日本ペイント | サーモアイウォール | |
エスケー化研 | クールテクトシステム | |
日新産業 | ガイナ |
遮熱塗料を外壁に塗ると、太陽光を反射して表面温度や室温の上昇を抑えることができます。塗料メーカー各社、環境省などの実験データによると、遮熱塗料を塗布した壁とそうでない壁を比較した場合、表面温度は平均8~10度下がり、室温は平均2~3度下がるという結果があります。
また熱による劣化で、外壁建材は耐用年数が短くなってしまいますが、遮熱塗料の表面温度上昇の抑制効果により、熱からのダメージを軽減することができるのです。しかし、遮熱塗料に断熱効果はありません。外気を中に伝えにくくしますが、室内の熱を外に逃がさないことはできないからです。
断熱効果のある塗料「ガイナ」
上記の遮熱塗料で紹介しました日新産業のガイナ。ガイナはJAXAのロケット技術を応用し開発され、遮熱と断熱の機能をあわせ持ちます。つまり、夏と冬の両方に効果を発揮するのです。
ガイナはセラミック製の空洞の粒で空気の層を作っています。塗装後の塗膜の状態で80%以上がセラミックとなり、他の断熱塗料と一線を画して質の高さを誇るガイナは、「塗る断熱材」とも言われています。上記の遮熱効果による省エネ性に加え、熱そのものを維持する断熱性のある塗料と言えます。
窓・サッシの断熱仕様工事
窓は室内や外の空気の出入りが一番多い場所です。夏は、日射しによる熱気の約70%が窓から室内に伝わり、また冬は、室内であたためられた空気の約50%が窓から逃げます。
そのため、どれだけ壁や床、屋根の断熱を施しても窓の断熱対策を行っていなければ十分な断熱効果は発揮されないともいわれています。複層ガラスや二重窓・樹脂窓に変えることで、外気の暑さ寒さの影響を受けにくくなり1年を通して少ないエネルギーで保冷・保温効果を高めることができるのです。
![]() |
![]() |
内窓をつける
今ある窓に内窓(インナーサッシ)を付けて二重窓に。窓と窓の間に空気層ができるため室内の温度は外へ、外気は室内へ伝わりにくくなります。1窓約60分の簡単な施工で断熱性がぐんと向上します。
複層ガラスに取り換え
サッシ枠はそのままで、ガラスだけを複層ガラスに替えることができます。内窓と同様に複数のガラスの間に空気層があることで温度を伝わりにくくする断熱方法です。
樹脂窓
樹脂窓とは、窓のフレームやサッシが樹脂製でできている窓のことです。これまで主流だったアルミ製のサッシと比べて、熱の伝わりが小さい樹脂窓は、結露を防ぐという特徴をもっています。
断熱リフォームでの補助金制度

ここでは外壁の断熱リフォームでの補助金制度についてお話しますね。断熱リフォームは、「省エネリフォーム」に該当する改修工事です。省エネ性能を高めるリフォームには「断熱リノベ」・「次世代建材」という国による補助金制度があり、一定の条件を満たす工事を行った場合に補助金の給付を受けることができます。
断熱リノベ(高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業)
「断熱リノベ」は、既存の一戸建て住宅やマンションで高性能の断熱材を用いたり断熱性能の高い窓に交換したりする断熱リフォームで利用できる補助金制度です。
対象 | ・既存の一戸建て
・既存の集合住宅 ・個人の所有者(所有予定)または管理組合の代表者 |
要件 | ・断熱材・断熱用ガラス・窓の対象製品使用のリフォーム
・リフォーム前と比較して15%以上の省エネ効果が推測できること |
補助額(上限額) | 対象工事費用の1/3以内
・戸建て住宅:1戸あたり最大120万円 (窓のみのリフォームは、最大40万円) ・集合住宅:1戸あたり最大15万円 |
次世代建材(次世代省エネ建材支援事業)
「次世代省エネ建材支援事業」によって、「次世代建材」といわれる高断熱パネル・潜熱蓄熱建材を用いたリフォームで利用できる補助金制度です。
対象 | ・既存の一戸建て
・既存の集合住宅 ・個人の所有者(所有予定)または管理組合の代表者 |
要件 | ・高断熱パネル・潜熱蓄熱建材のどちらかを使用するリフォーム(いずれか1つが必須工事となる)
・上記の改修に伴う補助対象製品(窓、断熱材、玄関ドア、ガラス、調温建材)のリフォーム |
補助額(上限額) | 対象工事費用の1/2以内
・戸建て住宅:1戸あたり最大200万円 ・集合住宅:1戸あたり最大125万円 |
※いずれも、要件となる製品はSII(一般社団法人 環境共創イニシアチブ:https://sii.or.jp/)が定める補助対象製品でなければなりません。
それぞれの制度の違いを確認して、ご自分の希望するリフォームが補助金の対象になるか参考にしてくださいね。
まとめ
室内を快適に保ち、環境にもやさしい断熱リフォーム。節電効果で長期的に見れば経済的な効果も高く、ぜひ検討したいリフォームです。断熱リフォームにおいては、建物の構造や立地条件によって適した工法や製品が違うので、ご自宅に合った方法を選んでくださいね。